想像の話

NHKの連続テレビ小説ちゅらさん」の中で、同じ事を思っている人がいるんだと知り印象に残っている場面がある。
ヒロインの恵理が恋に破れて夢を失い島に帰った時、いつも恵理のことを悪し様に言う小説家の真理亜が一緒についていってやる。真理亜は恵理に言う。「小説の中だけでも二人をハッピーエンドにしてあげる。」
私も、悲しい別れをした恋人達を知っている。二人は結婚するつもりだったのだけれど、親たちが許さなかった。現代でも肌の色の違いとか宗教の違いで相容れないと思っている人達がいるように、出身の土地が気に入らないということで頑なに反対する人も存在する。二人は有り得ないくらい強引に引き離された。そして彼女の方は、これもまた強引なやり方で結婚をさせられそうになる。彼女は手首を切ってしまった。衣装デザインをする人で絵も描く才能ある人だった。布地を切るためにいつも使っているハサミで左手を切り落とさんばかりに。骨までハサミが食い込んでいたそうだ。家族が気がついたのは、彼女の部屋から流れる血を見て。もう間に合わなかった。
恋人は彼女の死の様子を知り、それ以来深く沈み込んだ。彼も何度か死にかけた。
私はお話の中だけでも彼らをハッピーエンドにしてあげたかった。(私の実体験も混ざり込んでいるが本筋は別)
そんな思いで書いたのが『木漏れ陽の妖精』と『包装されていない贈り物
現実の世界はつらくて悲しいことがいっぱいなのだから、お話の中だけでも幸福な気持ちが欲しい。そういうものがあるから現実に対して立ち向かえるのだと思う。